SOHOと中古車買い取り

先日、少し時間ができたので、
以前から興味があった、
SOHO(ソーホー)を経験してみました。

SOHOとは、ウィキペディアでは、

「パソコンなどの情報通信機器を利用して、
小さなオフィスや自宅などでビジネスを行っている事業者」

と定義されています。

SOHOのお仕事には、すでにたくさんの方々が
取り組まれています。
当方もまた貴重な経験をさせていただきました。
今回の記録が、これからSOHOの仕事を経験してみよう、
という方々に、少しでもご参考になれば幸いです。


今やすっかり当たり前の単語となったSOHO、
現在はインターネットで、
新聞の折り込み広告や求人サイトと同じ要領で、
SOHOのお仕事を探すことができます。
そのサイトも検索すると複数出てきます。

仕事内容の例をあげますと、
データ入力、データ収集、ブログ記事・アフィリエイト記事作成、
ライター、校正者、編集者、ホームページ運営/制作、
アプリケーション開発、ゲームクリエイター、
税理士・司法書士・行政書士・社労士 他。

占い師、司会、声優などもあります。

SOHOの本来の意味である
Small Office Home Office、だけではなく、
外を動き回るお仕事も数多くあります。


とにかくなにかやってみようということで、
まず目についたのが、

「自動車に関するブログ記事作成のお仕事」

でした。

ブログ投稿要領は理解しているから大丈夫、
という軽い気持ちで問い合わせてみました。

この気軽さがSOHOの長所であり
危険にもなる部分であると思い知らされるのですが…


担当しているのは、東京都内のある企業。
公式サイトの業務内容には、
SEO事業、ホームページ作成、インターネット仲介業、
商品販売代行とあります。


求人情報欄に掲載されていた仕事の内容は、
だいたい下記のとおりです。

あらかじめ用意したブログタイトルで
記事を作成する。
1記事あたりの文字数は、500文字以上。
記事数は多数なので、記事の数量は応相談。

1記事の単価は200円。
1時間で5ブログ、早い人で6ブログ作成可能。

注意・禁止事項として、
まめにメールやスカイプをチェックできる。
高品質な記事を書ける。
適当に作成した記事は、再度修正依頼することがある。

納期は依頼から1週間以内。

給料支払いは銀行振込、手数料は負担する。
支払い総額は、記事数×200円。

その他応募資格として、18歳以上、経験者優遇。


SOHOの求人サイトには、募集者/応募者が
やりとりできるメッセージ送受信機能があり、
指定されたとおり、氏名、性別、住所、
メールアドレス、自己紹介を書いて送信しました。

まもなく、

「応募多数のため社内で検討した結果、
書類選考を行うので、再度、
複数のブログサービス利用に際して操作が可能かどうかと、
自動車に詳しい人が興味深く面白く思う記事が書けるかを
教えてほしい」

という内容の返信が来ました。

どういう目的でどういう人をターゲットにしたブログなのか、
疑問はありましたが、なんでも経験と、
まじめに返信しました。


やがて、

「応募多数につき書類選考の結果、
○○様にお任せしたいのでスカイプで打ち合わせしたい、
IDを教えてほしい」

と返信が来ました。


スカイプのアップデートも終わり、
メールで伝えた時間どおりに、
その会社の担当者と実際に音声で話したのが、5月23日。

まず、指示されたとおり、
Googleグーグルのドライブ機能で、
共有されたExcelエクセルのファイルを確認。

ファイルには、左端のセルから、ブログ運営会社
(代表的なところでFC2、ココログ、so-netなど11社)、
続いて、ブログのタイトル、URL、ユーザーID、パスワードが
並びます。

ブログのタイトルには、あらかじめ、漠然と、
「△△△△(車名)モデルチェンジ 2013」
「△△△△(車名)新型 2013」
「△△△△(車名)新型 値段」
と入力されています。


その会社の若い男性は、スカイプで淡々と話し続けました。

ブログの記事は、ブログ1つに、記事が2つ。
(2つ??)
記事はそれぞれ500文字以上。

1つめの記事には、タイトルに関する文章を書いて、
関係する画像をインターネットから探し、貼り付ける。
(貼る、というのは、正確には
ダウンロードするかスクリーンショットで切り取り、
アップロードして公開するということです)

その画像も「車名や署名などのすかし」が入ったものは避ける。
人の顔やナンバープレートが入ったものは使わない。
それ以外は、メーカーの公式サイトなど、
どこから借用しても構わない。

文章は、その車に関する記事を探して、
自分なりにアレンジして記事にする。
ただし、そのままコピー&ペーストはやめてほしい。

そして2つめの記事には、
ある中古車買い取り(販売)専門会社の、
中古車査定のページにつながる
リンクを入れてほしいということでした。


ここでやっと明らかになったのが、
ブログを設置する目的。

どこかの個人が、車のモデルチェンジやマイナーチェンジ、
新発売に関して書いた(ということにした)ブログで、
今持っている車を売るにはこの会社がいいですよ、
このページなら査定価格がわずか○分でわかりますよ、
と、リンクしたサイトへ誘導することです。


スカイプを通した指示は続きます。

「納期は5月30日、ブログは100件あります」
「ひゃ、100件…」
「1件200円で、全部完了すれば20,000円です。
スカイプで契約書を送りますので、出力、記入した後
再度スキャンして送ってください」

契約書は、万一の場合を考慮して、ここは
「後日郵送します」
と答えました。

「他になにかありますか。10時~19時までは
スカイプで通話できますから、いつでもご質問ください」

そういってその会社の人は、早々に切り上げました。


さあ、それからがたいへん。
5月30日までということは、
1日に最低15個のブログを仕上げないと
100個は完了しない。

車名とメーカーの組み合わせや、
細かい仕様は理解できるにしても、
これだけの数をこなすには、
とにかく何も考えずに、誰かの文章を
テキトーにコピーして貼ってわずかに言い回しを変えるなど、
原稿を「作成」するのではなく「作業」に
徹する必要があります。

その会社が指定した、オリジナルの
「高品質な記事」には、自分には到底およびません。


さらに悪いクセ?で、
ふだんブログを書く要領で、
熟考してついつい時間がかかってしまう。

とにかく、それでは間に合わない。

500という文字数はクリアできても、
慣れないうちは、ブログを1日15個など、到底追いつきません。
自分で考えた日々のノルマが、
ヤミ金の利息のようにどんどんふくらんでしまう。


なにかその会社からメールが来ているが読む余裕もなし。
スカイプを稼動するヒマもありません。
朝7時から開始して、深夜12時近くまでかかります。
指示された、文字数を数える「文字カウンタ」
のサイトも、ついに開けることはありませんでした。

やっと雇い主の方からのGメールを開いたところで、
(しかしなぜ企業なのにGメールアドレスなのか)

「こういう言い回しは/繰り返しは避けるように」
「○○らしい、とか○○だそうです、というあやふやな
言い回しはやめてください」

当たり前ですが、雇用主は、作成した記事を
逐一チェックしてくださっているらしい。

しかし、あぁそうですか、とすぐにそのブログに戻って
修正する余裕もない。

人の文章のコピーはだめ、ということなら
自分の文章はコピーしてもOKと解釈しましたが、
そこも少しアレンジしてほしいということでした。
実際、コピーでないととても間に合わない状態でした。

あやふやな言い回しと指摘するが、
その中古車買い取り会社の公式ブログでもないのに、
ましてや自分の車でもないのに、
エラソーにいろいろ断言するのはどうなのだろう…

心の中で、疑問がだんだんと大きくなっていきます。


これがまだ、求人募集した会社の方々と、
実際会ったり、コーヒーでも飲みながら話をしていたら
少しは感情が変わるのでしょうが、
メールの文字を読むと、なぜか怒りにも似た感情がわいてくる。

ということは、文字だと、
伝えたいことが、伝わっているようで
伝わっていないのです。
伝わっていると思い込むところにも罠があります。


それでも30件ほどブログを作成したところでフト冷静になり、
同様に他の方が作成したブログを数件探してみたところ…

やはりあわてて作成されたのか、
誤字脱字も多く、車に関する情報サイトの記事を
コピーしたのがすぐわかる内容で、
この程度でいいのか、と、まじめに取り組んでいた
自分が情けなくなりました。


さらに、自分は写真を撮る側なので、
(お仕事の一環でもあるので)
この画像使用(=借用、盗用)に際しては
とてもうしろめたさを感じました。

カメラの機能、加工技術やソフトが
発達しているとはいえ、機材を駆使して、
苦労して撮影されているはずです。

また、参考にする記事に関しても、裏を返せば、
1文字でも変えればオリジナルである、
ということです。
必死で文章を考えたライターの方々の努力が
軽く見られているような、申し訳ない気がしました。

ブログを書かれた経験のある方なら、
文章や画像を参考にする場合、元になったURLを紹介したり、
トラックバックで敬意を示すのが普通、ですとか
「礼儀」と認識されると思います。


それとも、そういう自分の考えが
古くなってしまったのか。
写真や記事の価値が低くなってしまったのか、
いまどきは企業でも、無断借用は当たり前という
姿勢なのか。

睡眠不足による不機嫌さも手伝って、
いろんな疑問が湧いてきました。


さらに、設置したリンクの、
中古車買い取り会社名を聞いたとき、
(インターネット上の評判はアテにならないとしても)
顧客対応が悪いと書かれていたことを思い出しました。

改めて検索すると、車を売った際のやりとりや不満が
細かく書かれたブログが目につきます。

しかし、業務内容的に批判されるのは仕方ないので
ここは仕事、と割り切ろうとしても、さらに、

ふつうの人が書いた(ということになっている)ブログに
検索などでたどり着いて、
読まれた方々はどう思うだろうか。
読んでさらに「あぁそう」と簡単にクリックするだろうか、
と疑問がさらに湧いてきます。

当方もいろんな方のブログを拝読しましたが、
車に関するブログを書く方々は、
もっと濃く、個性的な内容です。
ましてや、人の記事や画像を黙って使う方々は
まずいらっしゃらないのでは。
営業的内容のブログは別ですが。

だから、リンクに誘導するような、
ヤラセ的な内容であることは、
よほど初心者の方でない限り、
すぐ判明してしまうのは容易に想像できます。


また、こうしていろいろ考えてしまうことで、
自分はこの仕事に向いてない、
ということがハッキリわかってきました。
そしてついに、ブログを50個(記事として100個)
作成したとき、良心の呵責で力尽きました。

「たいへん申し訳ないのですが、50件しかできなかったら
どうなりますか」

とメールを送信したところ、

「上司に聞かないとわからない」

と返信をいただき、さらに、

「とてもいい調子で書けていますので、
あと50件、がんばりましょう」

という内容の文章を読んで、ますますやる気が失せました。


思い切って、SOHOの求人情報サイトの管理者の方に、
現状を説明して、SOHOの仕事とはそういうものか、
メールでご意見をうかがったところ、
だいたい下記の内容で返信が来ました。

「取引上のトラブルについては、双方の言い分をおうかがいしても
判断が難しいので、こちらからの介入は控えさせていただきます。

相手と連絡がつかない状況の場合には、メールでご連絡して、
回答がない場合、アカウント停止処分等の対応をします。

現在は双方連絡が取れている状況なので、
こちらからの対応は控えさせていただきます」

基本的には、サイトのスペースを貸しているだけなので、
ごもっともなお話です。

振込詐欺(今は「母さんたすけて詐欺」)で
銀行や郵便局の方々を責めることはできません。
今はだいぶ減りましたが。


雇い主の方に、思い切ってスカイプで話しかけ、

「申し訳ないのですが急用ができてこれ以上できません」
(「急用」は言い訳)

というと、
「メールを見てください」と
おっしゃいます。

スカイプでそのまま話したらいいのに、
と思いつつメールを開くと、

「ご自身のスケジュールを確認して、この案件にご応募されたんですよね?
お給料ですが、求人情報にも記載してありますが、完成後にお支払いということなので、
現段階で辞退される場合は、お支払いすることができません

と書いてあります。

じゅうぶん予想できたことなので、とくに反論もせず、

「迷惑かけたのでお給料は辞退します」

とスカイプでお答えしました。
あっさり終わって、安心しました。

先方は、何も経費を払わなくてすんだ、
ときっと安心されていたでしょう。


自分なりに、なるべくコピーしないよう、
経験からも照らし合わせて文章を考えたので、
(今となっては余計なことをしたと後悔)
いっそ、作成した記事やブログを
全部削除すればよかったかもしれません。

しかしそれでは、もう少し面倒なことに
なっていた可能性があります。

それにもし100個のブログを完成していたとしても、
「満足な内容は少ない」と、
相当減額されたかもしれないのです。


その後、SOHOの求人情報サイトには、
こういう結果になったから、と報告させていただきました。

そして、掲示する募集案件には、
数量は「多数」ではなく「100個」とキチンと書き、
1個200円だが、100個のうち50個できても1銭も払えない、
とひとこと書いておくように指導してください、
とお願いをしました。

その他、一方的に押しつけるのは「応相談」と言わない、
など、他に申し入れたい件が多々ありましたが、
SOHOはすなわち自己管理。
自分の身を守るのも自分です。
求人情報を見た時点で、とことん納得のいくまで
質疑応答を繰り返すべきでした。

経験しないとわからないことも多いので、
今回のことは、ほんとうに勉強になりました。


最後に…今回のやりとりを振り返るために
そのSOHO求人情報サイトの、
該当する案件を見たところ、

案件の参照数:380件
案件の応募数:3件
発注者からの返信数:11件

…と記載がありました。
「案件の応募数:3件」て。

求人情報サイトを他にも多数利用して
募集していた可能性もあるとはいえ、

「応募多数につき書類選考の結果」

とは、いったいなんだったのだろうと、
またチカラが抜けてしまいました。


ところで、その中古車買い取り専門会社との
やりとりが書かれたブログには、

「愛車の査定は50万円だったのに、
実際支払われたのは37万円だった」

と記載されています。

査定の時点で契約書を交わさないから、値段が下がっても
しかたない、というのがその会社の言い分です。

またそのブログも、運営会社経由で、
その会社から削除依頼されたそうです。

お客様に対して堂々と、口約束は無効、
などと言ってしまう会社って、どうなのでしょうか。
客観的な立場からいろいろ言うことはできませんが。

今回の件が、どうしてもダブって見えてしまうのでした。

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