学生フォーミュラが受け継ぐもの

8月16日は、神奈川県秦野市菩提にある
株式会社 N. A. C. T.(ナクト)
さんで、学生フォーミュラのマシンの部品を
製作する現場を拝見しました。

製作していたのは、9月3日(火)~7日(土)、
静岡県の小笠山総合運動公園、
エコパ
で開催された、
第11回 全日本 学生フォーミュラ大会
~ ものづくり・デザインコンペティション ~
に参戦したマシンの、サイドポンツーンです。

焼き上がったカーボンを型から外す作業。
とにかくたくさんの工程があります。
ひとつひとつの作業、動作、技術が伝達されていきます。



第11回 全日本 学生フォーミュラ大会
~ ものづくり・デザインコンペティション ~
開催日:2013年9月3日(火)~7日(土)
会場:エコパ(小笠山総合運動公園・静岡県)
公式サイト
公式ブログ
開催概要
大会規則(PDF)
エントリーチーム一覧(PDF:2013年3月20日現在)


そしてこの日に訪問させていただいた
株式会社 N. A. C. T. (ナクト)
の正式名称は、
Nippon Advanced Composite materials Technology
です。
直訳すると、「日本先進複合材料技術」です。

そもそも、学生フォーミュラの方々の
写真を撮らせていただくことができたのは、
「ル・マン24時間 -闘いの真実-」の著者である
林 義正(はやし よしまさ)氏が、かつて率いていた
「ル・マン・プロジェクト」において、
やはりカーボンFRPなどの製作技術の他、
あらゆる知識、常識や規律を
学生さんたちに教育/教示されていた
肱黒 勇吉(ひじくろ ゆうきち)氏のおかげです。
肱黒 氏は、同書にもご登場いただいています。


技術の統括を担当されているN. A. C. T. (ナクト)さんで、
肱黒氏(通称であり敬称「親方」)は、
かつてル・マン・プロジェクトにされたように、
カーボン製作の技術を学生フォーミュラの方々に
伝授されています。

「そんなことではいいエンジニアになれないよ」
親方の厳しくも温かいおことば。


肱黒氏は、日産テクニカルセンター
車両技術開発試作部に所属されていた1988年、
全日本スポーツプロトタイプカー耐久選手権(JSPC)と
ル・マン24時間レース参戦用グループCカーの、
R88Cのカーボンカウルを製作された方です。

過去に日産自動車の設計部門で、
P10プリメーラやR32スカイラインのパッケージング
(各プラットフォームにどういうエンジンや
ボディを載せてまとめるか)
を担当されていた水野 和敏(みずの かずとし)氏と同行して、
イギリスのレーシングカー・コンストラクターの
ローラ・カーズ社で、門外不出といわれた
カーボンコンポジット技術を習得されました。

肱黒氏が製作されたカウルを装着したR90CPは、
林 義正 氏が設計したVRH35Z
(V型8気筒 DOHC ツインターボ)
のエンジンを搭載し、
1990年 第58回ル・マン24時間において
日本車トップの5位入賞や、
同年の国内の全日本スポーツプロトタイプ耐久選手権で
数々の表彰台獲得をもたらしたマシンです。


肱黒氏がお持ちの貴重な写真の数々をご紹介します。
R88Cが1988年2月1日、富士スピードウェイで
シェイクダウンしたときの画像です。
このときテストは3日間おこなわれる予定でしたが、
寒さと降雪で残念ながらキャンセルされました。


ル・マン参戦時の写真です。


サーキットでの肱黒 氏です。
ル・マン・プロジェクトでも同様に学生さんたちを
指導されていました。




R90CP、アリゾナのテストコースでの写真です。
このとき400km/h到達を目標としていましたが、
ウェスタン映画に出てくるような、
丸くまとまった草や、鳥がカウルに当たって
刺さったりなどの弊害で、
392km/hの記録にとどまりました。

現地には他に、サソリがいたので
注意しながら炊事されたそうです。


そして上の写真が飾られていたフレームの裏に、
そっと保存されていたのがこれらの新聞の切り抜きでした。


2008年、学生が参加するチームとして初めて、
ル・マン24時間に参戦したのは充分大きな成果だし、
完走できなかったのはとてもくやしい。

しかしそれでも、

「完走できなくてかえってよかった」

と肱黒 氏はおっしゃいます。
初めて参戦して、いきなり入賞したら、
すぐ有頂天になってしまう。
その後の目標地点があいまいになってしまう。
おそらくそういうことを懸念されていると思います。

過去に、

「『これだけのことをやった』という自負が
その仕事(の内容や成果)をダメにしてしまう」

という、どなたかの名言を聞いたことがあります。

どんな仕事にしても、
まだまだ先がある。
まだまだ頂点ではない。

…くらいがちょうどよいのかもしれません。

この新聞の切り抜きは、
「次回はきっと、本戦へ参戦し、完走を成し遂げる」
という目標を達成するための、
お守りのような存在かもしれません。

2011年のニスモフェスティバルで
鈴木 利男 氏、肱黒 勇吉 氏、水野 和敏 氏。


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