喪服のスゝメ

 先日の親戚のお通夜で、

親族の女子高生の短いスカートから、

小さい彫り物が見えてしまった。

初めて目に入った時は、きっと、

「あざ」「ほくろ」の類と判断した。

しかし心のどこかでは、

そんな甘いもんではない、

と否定していた。


これから通夜が始まるというのに、

そんなことでモヤモヤしている

場合ではない。

自分も、それを許容した親や祖父母を

クドクド責められるような、

品行方正な人間でもない。


見なかったことにしよう、

と結論づけた。





















もし自分の身内が見たら、おそらく

時と場所も関係なく、

小一時間は説教しただろう。

説教されたり怒られたことが

ない人々は

立ち直れないかもしれない。


また今の時代、それちょっと変だよ?

と、慣習や常識に基づいて指摘すると

逆に責められることがある。


争いやもめごとで体力や時間を

浪費しないために「見なかったこと」

にする人も多い。


だが、そういった感情のモヤモヤを

一気に片付ける賢いルールがある。


「喪服では肌の露出はNG」


である。


彫り物の類は文明以前からあったし

(日本の彫り物は海外のものと

比較にならない)

それを「見せるな」と強く否定せずに、

さりげなく、


喪服の時は、夏でも長袖で、

肌を見せるのはやめましょう、


という常識を作ってしまった。


この暗黙のルールを最初に決めた人や

遵守してきた先人の方々を、

心から尊敬する。

これさえ守れば、感情の起伏もなく、

静かに式は進行する。

無数の功績を残した人を見送る儀式では、

少なくとも主役は故人であって、

個人ではない。

(個人の感想です)


学校の制服だからいいじゃないか、

というご意見もごもっともである。

しかし制服はだいたい変形させて着るから、

今後のためにも、思い切って

喪服を持つことをお勧めする。

長い間着るから、数万円単位の

キチッとしたものを

選んでいただきたい。


自分のは約10万円だったが、

もう10年以上は着ている。


暑い日に長袖はかなりしんどいが、

式場はたいてい冷房が

効きすぎるくらいである。


汗だくになったところで、

家での洗濯にも十分耐えるし、

シワもできない。すぐに乾く。

サイズのタグはついに取れたが、

外見は全く問題ない。

安物では、そこまで

デザインされているかは知らない。


不謹慎な言い方かもしれないが、

葬祭とは、結婚式と同様に、

男や女を「あげる」

貴重な場でもあるのだ。

次に「また会いたい」と思わせるような

人に変わるのは、

早すぎたり遅すぎることは

決して、ない。

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