蛇を掴んだ男

 数日前の晴れた午後、

サボテンを植え替えていたら、

近所の奥様が、


「あの人ヘビ持ってるわよ! ヘビ!」


と、行った道をわざわざ引き返して

教えてくれた。

膝が痛い、膝が痛い、と言いながら

歩いて買い物に行くからたいしたものだ。


サボテンを一旦置いて立ち上がると、

奥様の後方から、年配の男性が、

黙々と歩いてくる。

おそらく近所の方だが、どなたか知らない。

左手に持った蛇をズズズ・・・と引きずっている。

太いホースかと思ったら、確かに蛇だ。

そしておそらくもう死んでいる。

車に轢かれたのだろう。気の毒に。

















自分が見知った大きな蛇とは、

幼少時に野毛山動物園の爬虫類館で見た

アナコンダくらいで、ここ最近ではせいぜい

トカゲか蛇かわからないような

小さいサイズだった。


だからうっかり「ウワー!」と

大声を上げてしまうところ、

男性が黙々と蛇を引きずって歩く

シュールな姿を見ているうちに、

恐怖はヒュウゥと萎んでしまった。


それでボーゼンと見ている自分に気付いたのか、

その男性は、

「まだあったかい」

と答えた。

その間にも蛇はズズズ・・・と引きずられていく。

たぶん外気で温度が上がった(と感じた)だけで

「それはない」

と心の中で突っ込むしかなかった。


別件だが、野毛山動物園は無料で入れる。

爬虫類館も無料である。

自分の記憶では爬虫類館は後からできた。

自分が通った頃は、象もいた。

最寄りの駅から徒歩、バスで行ける。

駅からの坂は急で、これからの季節、

かなり汗だくになる。良い運動である。

それで爬虫類に耐性ができるなら安いものである。

ぜひ一度は訪れてみてほしい。

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