もうアイドリングストップなんてしない

 車をどれだけ大切に扱っても、

やさしくブレーキやアクセルを踏んでも、

オイルをマメに交換しても、

高額な純正品しか使わなくても、

全ての車が逃れられない事象がある。


「経年劣化」である。


8月末のある日の外出前、それも

たまたま車の下をのぞきこんだ時、

左のリアタイヤの横に、ふにゃふにゃした

ゴム状のものが落ちていた。


タイヤハウスの左右を見比べた時、

自分の車から落ちた部品としっかり理解した。










右の同じ箇所に手を伸ばすと、

見えないところで裂けていた。

翌日見たらなくなっていたので

あわててのぞき込んだら、

タイヤの裏側へズレ落ちていた。










落として迷惑をかける前に、

手を伸ばして引っ張ったらあっさり取れた。

材質が同じものは、同じ時期にダメになる。










なくてもいい部品では??

とモヤモヤしながらもディーラーに連絡し、

日程を調整して訪問。

修理の日程はすぐに決まり、

左右のダンパーカバーは難なく修復した。










これで数年は大丈夫、と安心したついでに、

時々発生して気になっていた事象を

ディーラーで打ち明けた。


交差点でブレーキを踏むと、

アイドリングストップが機能して

エンジンがストップする(ここまで正常)。


ところがブレーキを離すと、

エンストするのである。


アイドリングストップをキャンセルして

走行し続ければ、

エンストする恐怖の瞬間は来ない。


整備担当の方の話では、

「スターターモーターが弱っているとすると、

スタートボタンを押してもエンジンが

かからなくなるかもしれない」


「そうならないかもしれない」

と考えるようにして、ディーラーから

帰宅した。

前向きでも何でもない。

ただの正常性バイアスだ。


しかしさすがの整備士さんである。

数日後、忠告されたことが

現実になった。


スタートボタンを押しても

スコッ!

と虚しい音がして

エンジンがかからなくなった。


もう頭が真っ白、首筋が冷たくなる。

自宅ならまだ良い。

外出先では泣きたくなる。

それでも病院、買い物など、

外出しないといけない事情は

必ず発生する。


それでも2回、3回とボタンを押すと

エンジンはかかるので、

まずアイドリングストップを

キャンセルし、グッタリしながら

帰宅する。

クラシック音楽を車内で流しても、

心の中は全く穏やかでない。


不安で運転に集中できない、

というのは運転手にとって致命的だ。


免許を取って、自分の車を手に入れて

約30年。

まさか、車が嫌いになる瞬間が来るとは。

毎回スタートボタンを押すたびに、

心の中で悲鳴を上げるように祈る。














いっそ機能の少ない、

古い車を探して乗った方が

楽なのではないか?

自転車? 原付は?

と考えるようになった。


それでも結局、部品が少ない状態からの

部品待ち→待望の納品となり、

期末のクソ忙しい中、修理していただいた。


その後は全く問題なく、ありがたく、

エンジンはかかるようになった。

スタート直後には忘れずに

アイドリングストップをキャンセルする

ボタンを押す。


燃費は若干だが悪くなったとしても、

数年後にこういうヒヤヒヤする事象に

襲われた上に7~8万円かけて

修理するなら安いものだ。


ある日、病院の駐車場で、

見覚えのある部品が転がっているのを

見つけた。

車の持ち主は、おそらく、

部品が落ちたことすら気づかない。


















同じフィットには、運良く、
ブーツカバーが外れなかったり、
エンジンがかからない状態には
ならない車もあるかもしれない。
当たりハズレの世界である。

同じことが発生してもあわてないように、
同じ車に乗る方々への勝手な仲間意識として
記録しておこうと考えた次第である。

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